大判例

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大阪高等裁判所 昭和59年(ネ)1383号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人らは控訴人に対し各自五〇万四五二〇円及びこれに対する昭和五五年一一月二三日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに金員給付の点につき仮執行の宣言を求め、被控訴人ら代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の主張、証拠の関係<省略>。

理由

一請求原因1、2(一)の各事実、2(二)の事実中、控訴人が昭和五五年一一月二二日午前九時一五分頃草津警察署に赴き、同署の東谷警務課長に対し、被疑者砂田との接見の申出をし、東谷が控訴人に本件一般的指定書を見せたこと、控訴人が同日午前九時四〇分頃同警察署から退去して大津地方検察庁へ出向き、松本検察官から具体的指定書の交付を受け、同日午前一一時頃再び草津警察署へ戻り砂田と接見したことは当事者間に争いがない。

二<証拠>を総合して認められる事実経過は、原判決一五枚目裏五行目から同二〇枚目裏七行目までの認定と同一(ただし、原判決一六枚目表一〇行目の「検察実務」から同末行の「あるので」までを削除し、同裏五行目の「送付した。」の次に「大津警察署は砂田の勾留後も連日午前、午後にわたり同人の取調べを継続していた。」を加える。)であるから、これを引用する。<中略>

三本件一般的指定が違法であるとの主張について

刑訴法三九条一項に定める弁護人等の被疑者との接見交通権は、弁護人等の最も重要な固有権の一つであることはいうまでもなく、右接見交通権と捜査の必要との調整を図るため設けられた捜査機関の刑訴法三九条三項の接見等に関する指定は必要やむをえない例外的措置であつて、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えなければならないというべきである。

ところで、<証拠>によると、前記接見指定の方法について、これを定める法令がないため、捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見の申出があつたとき、手続上の混乱を避け、無用な紛争の起きることを防止し、円滑に接見できることを目的として、昭和三七年九月一日付法務大臣訓令「事件事務規程」二八条に基づき、原判決別紙二記載様式第四八号を用い、捜査のため接見等の指定が必要になると予測される事件についていわゆる一般的指定書を作成し、これを拘置署長あるいは代用監獄の長である警察署長に交付し、当該事件についていわゆる具体的指定がなされることのあることをあらかじめ通知する取扱いがなされていることが認められる。してみると、一般的指定はその目的、内容に照らし捜査機関の内部的な事務連絡文書であると解すべきであつて、被疑者あるいは弁護人等に対し何らの法的効力が生ずるものではないというべきである。

もつとも、原審証人東谷正道の証言によると、草津警察署においては、一般的指定のない事件については、弁護人から接見の申出があれば、これを受けた留置主任者が、捜査主任官あるいは検察官に連絡することなく直ちに接見の手続をとるけれども、一般的指定のある事件については、弁護人に検察官の具体的指定書の提出を求めるか、自ら捜査主任官、検察官等に連絡をとつたうえ具体的指定等の指示を受け、接見の手続をとる取扱いであることが認められる。したがつて、一般的指定の有無によつて、その取扱いが異なるけれども、被疑者留置規則二九条二項によると、接見指定権は捜査主任官に属し、被疑事件が検察庁に送致された後は検察官が指定権者であると解されるから、指定権がなく、したがつて指定のための判断権もない警察署の留置主任者としては、速やかに接見を申し出た弁護人に対し指定権者を明示しするなど接見指定を受けるための手続を説明し、直接指定を受けることを求めるか、自ら指定権者に接見の申出のあつたことを伝達し、これを受けた指定権者においても、速やかに捜査のための必要性に応じ接見を容認するか、あるいは接見についての日時、時間等の指定ないしはそのための弁護人等との協議をすれば足り、弁護人等としては、右の手続が速やかに行われないか、捜査のための必要性がないのにかかわらず、接見が制限された等の場合にそれらの措置の違法性を問えば足るのであつて、一般的指定自体は違法ではないと解するのが相当である。したがつて、事件事務規程二八条に基づいて発行された本件一般的指定も違法ではないというべきである。

四接見申出後の措置の当否について

前記二認定事実によると、草津警察署の東谷警務課長は、控訴人の砂田との接見申出に対し、初めは具体的指定書の提示を求めたものの、捜査主任であつた大津警察署の竹田刑事官を通じ松本検察官に連絡すべく電話をし、竹田刑事官は松本検察官に電話で控訴人が接見の申出をしていることを伝え、松本検察官は控訴人から直接連絡をして貰うよう指示したものであつて、その間、控訴人が接見の申出をしてから東谷が松本検察官の指示を受けるまで約二八分を要し、竹田刑事官は検察官の通常の出勤時間を考慮して数分間連絡を控えたこと等の事実があるけれども、東谷から竹田刑事官への電話がすぐつながらず約一〇分要したこと、接見指定の必要性についての判断に要する時間、その他、東谷が竹田刑事官に連絡中であることを告げ、あるいは室内の電話で直接検察官に連絡することを示唆したが、控訴人がこれに応じなかつたこと等の事情を総合して判断すると、右程度の時間の経過は、手続をとるに相当な範囲というべく、右手続をする間控訴人が砂田と接見できなかつたことをもつて、東谷はもちろん竹田刑事官のとつた措置が違法であるということはできない。そして、控訴人が今しばらく草津署で待つていれば容易に松本検察官と連絡がつき、砂田と接見できたであろうことは、前記争いがない事実及び認定事実により明らかであるから、松本検察官からの連絡を待たずに草津署を退去したために被つた控訴人の損害については、控訴人が接見を申出でたとき接見指定の要件が具備されていたかどうかにかかわりなく、被控訴人らが責を負うべきいわれはないというべきである。

五してみると、控訴人の本件請求は失当として棄却を免かれず、これと同旨の原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとし、民訴法九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官乾 達彦 裁判官宮地英雄 裁判官馬渕 勉は転勤のため署名押印することができない。裁判長裁判官乾 達彦)

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